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最高裁判所第二小法廷 昭和46年(オ)538号 判決

主文

理由

上告代理人樫本信雄、同浜本恒哉の上告理由第一点について。

被上告人ら代理人が昭和四五年四月一八日の原審口頭弁論期日に陳述した同日付準備書面によれば、「仮りに被控訴人山内能子の主張どおり、本件賃借土地は六一二番の六であり、同土地は山内能子より山内一晃に、次いで訴外某に順次所有権ならびに占有権が移転しているものであれば、控訴人らは控訴の趣旨第一、二項の訴(賃借権確認と土地引渡)を本書面を以て取下げる。」というのであつて、かかる条件付訴の取下は、訴訟係属を不明確ならしめるから、許されないものといわなければならない。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同第二点について。

原審の認定したところによると、本件土地三は、大正一三年八月一日上告人山内能子の父山内定次郎から柏原郵便局後援会が非堅固建物所有の目的をもつて期間の定めなく賃借したものであるが、右賃貸借契約は、その後上告人山内能子と第一審原告北村利次とによつて承継され、借地法一七条の適用により昭和一九年七月末期間が満了したところ、同法六条により更新したものと看做され、その二十年後の昭和三九年七月末さらに同法四条によつて更新されたというのであつて、右事実関係からすれば、北村利次の承継人である被上告人らは、右土地について非堅固建物所有を目的とする期間の約定のない賃借権を有するものというべきであり、ただ、借地法の規定の適用によつてその存続期間が二〇年とされるにすぎない。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同第三点について。

所論は、原審が本件建物の価格を一〇〇万円くらいと認定しながら上告人らに一〇〇万円の支払義務を認めているのは、理由齟齬、採証法則違反である旨主張するが、原判文の前後関係からすると、原審は一〇〇万円か一〇〇万円を少し超過する趣旨で「くらい」という語を使用したものと解するのを相当とするから、原判決に所論の違法はない。

その他所論の各点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

(裁判長裁判官 吉田 豊 裁判官 小川信雄 裁判官 大塚喜一郎)

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